マイクロスコープで寸法計測する場合、寸法計測ソフトを使用して測定するのが一般的です。寸法計測ソフトの機能としては二点間の距離計測、円の半径計測、角度計測などが一般的ですが、さらに発展した機能が備わっている計測ソフトも増えています(当社のデジタルマイクロスコープは寸法計測ソフトが標準付属)。

寸法計測する際には 必ず事前にキャリブレーション(校正)という作業が必要になります。計測、測長の精度を高めるキャリブレーション(校正)のやり方とコツについて 計測精度を高めるキャリブレーション(校正)のコツ にて詳しくご紹介しています。ご参照下さい。

 

2本の平行線間距離

ノギスのように2本の平行線で観察体を挟み込んで、距離を測長することができます。
通常、2点間の計測を行う場合、どの2点を選択するか、その位置によって長さが変わってしまう問題があります。

2本の平行線間距離計測は観察体を2本の平行線で挟み込むことによって、あたかもノギスで測るように安定した計測を行うことができます。幅や厚みの計測に適しており、特に、ノギスが当てられないような観察体に有効です。また、円の直径を図ることにも代用できます。

計測したい部位に接線を引く→任意の位置でクリックすると平行線を表示→平行線でノギスのように挟み込み計測

計測具体例

クリックすると拡大します
  • 溶接部位の幅を挟みこむようにして幅を測長
    溶接の溶け込み計測
  • 層の片側に沿って基準線を引き、平行線で層を挟むように測長
    炭素繊維層の厚み計測
  • パターンの片側に沿って基準線を引き、平行線でパターンを挟むように測長
    電子回路のパターン幅計測
  • 歯車の高さ計測
    歯車の高さ計測
  • 円に接線を引き、ノギスで挟むように計測
    円の直径計測
  • 異物の片側に接線を引き、ノギスで挟むように計測
    フィルムに付着した異物の計測
主な用途
  • 金属部品の溶接部において、どの程度溶接が溶け込んでいるかを測長
  • 炭素繊維や塗装膜における各層の厚み(膜厚)計測
  • 電子基板のパターン幅測長
  • 歯車の刃の深さ計測
  • 円や楕円の直径計測
  • 金属や樹脂についた打痕やシミなどの大きさ計測
  • フィルムなどに付着した異物の大きさ確認
  • 食品に混入した異物の大きさ確認
  • 量産実装前の試作品の品質確認
  • 食品に混入した異物の大きさ確認
  • 断面による厚み計測(紙、段ボール、フィルム、ゴム)
  • 断面による封止材などの厚み(盛り上がり)計測
  • BGA実装後におけるBGAボールのおおよその大きさ確認

2本の平行線間距離計測 を保有する弊社計測ソフト
MicroLabo(MicroLaboLTの上位ソフト)
Achcam(DS-3A,DS-3ALスコープのみ動作するDS-3A/AL専用ソフト)

 

任意の線からの垂直線距離

1本の任意の線から複数の任意点までの垂直線距離を計測します。

観察体に沿って1本の線を引く
任意の点をクリックすると、垂直線が表示され、1本線から任意の点までの垂直距離を計測、同時に複数の任意の点までの垂直距離を計測すことが可能

この計測の特長は1本の任意の直線から任意の点までの垂直距離を複数計測できることです。 観察体の断面で利用すれば、厚みのバラツキ確認に利用できます。 加工品においては規定の位置から加工部位までの仕上がり寸法確認に有効です。 また、位置決めした後の隙間や線幅、加工幅の確認にも応用できます。

計測具体例

クリックすると拡大します
  • 塗膜層の厚さの測長
  • 塗膜層の厚さの測長

片側の直線部位に沿って基準線を引き、そこから凹凸の位置を指定することにより、垂直距離を計測

  • 基板のパターン計測
  • 基板の端子長さの計測

基準の位置としたい部位に沿って基準線を引き、そこから任意の位置を指定することにより、垂直距離を計測

  • BGAボール実装後のボールの高さばらつき確認
  • BGAボール断面での高さ確認

下の基板面を基準に直線を引き、そこからBGAパッケージとBGAボールが接している位置を指定し、高さを計測

  • 刃先の幅計測
    刃先の基準位置から先端までの垂直距離計測
  • 2枚刃の位置確認(間隔の測長)
    向かい合わせになった特殊刃の片側を基準線とし、各部の幅を測長
主な用途
  • 断面による厚みのばらつき計測(紙、段ボール、フィルム、ゴム、塗装膜など)
  • 加工材料の辺(端)から加工位置までの寸法確認
  • 基板のパターン寸法計測等
  • BGAボール実装後のボール高さの確認
  • 位置合わせや加工後の隙間の均一性を確認
  • 線幅、加工幅の均一性を確認

任意の線からの垂直線間距離計測 を保有する弊社計測ソフト
Leopard
MicroLabo(MicroLaboLTの上位ソフト)
Achcam(DS-3A,DS-3ALスコープのみ動作するDS-3A/AL専用ソフト)(1箇所のみ計測可能)

 

2本の線が交差する角度

観察体の辺に沿って引いた2本の線から、やがて交わる角度を計測します。
一般的に角度計測というと3点を指定することにより計測を行う方法になります。

3点を指定→角度を計測

しかしながら、3点を指定できない観察体もあります。先端が平らになっているものや、丸まっているような観察体です。
辺に沿って引いた2本の線がやがて交差する角度を求める方法を利用すれば、先端が丸いドリルやカッターなどでも 簡単に角度を得ることができます。

辺に沿って線を引く→同様に辺に沿って線を引く→2本の線がやがて交差する部位の角度を計測

2線が交差する角度がわかれば、ドリルやカッターやチップなどの治工具の検査に応用することが出来ます。定期的に計測することにより、角度の変化から「摩耗」という状態を判断する手段にもなります。 また、車輪など通常は平行であるべきものが、角度がつくことによって、傾きを知ることにも応用できます。

計測具体例

クリックすると拡大します
  • ドリルの角度計測
  • カッターの先端部の角度計測

ドリルやカッターの両側に沿って直線を引くことにより、やがて交わる角度を計測

  • 歯車の歯角度
    各歯の両側に沿って線を引き、角度を計測
  • 車輪の傾きを確認
    両車輪の沿って線を引き、傾きを確認
  • 曲げプレスの角度
    プレスによって曲げた部位の両側に沿って直線を引くことにより、角度の計測
主な用途
  • ドリル、ビス、カッター、切削チップ等、工具の角度計測
  • 治工具の角度計測による摩耗の判断
  • 歯車など各歯にバラツキが無いかを計測
  • 曲げプレスの角度
  • 車輪の傾き確認
  • 隙間の平行確認

2本の線が交差する角度計測 を保有する弊社計測ソフト
Leopard
MicroLabo(MicroLaboLTの上位ソフト)
Achcam(DS-3A,DS-3ALスコープのみ動作するDS-3A/AL専用ソフト)

 

2つの円の中心から中心までの距離(穴ピッチ間距離)

2つの正円を作成することにより、円の中心位置から中心位置までの距離(穴ピッチ)を計測します。

任意の3点指定で正円作成→同様に3点指定で、もう一つの正円作成→2つの正円の中心間の距離計測

大きさの異なる2つの円であっても3点を指定するだけで中心間距離が計測できるので、金属加工におけるネジの穴ピッチ間距離計測や電子基板のスルーホールのピッチ間検査に有効です。金属や基板の加工後の穴は完全な正円で無い場合が多いですが、おおよその円であっても、仕上がり寸法を確認することに役立ちます。

計測具体例

クリックすると拡大します
  • 電子基板のスルーホール、ランド、ビアホール等の穴ピッチの確認
    電子基板の仕上がりの寸法確認
  • 電子基板において、パターンのピッチにズレが無いか、円の中心間距離によって確認
    電子基板の仕上がりの寸法確認
  • ボタンの穴に合わせて円を作成。ボタン間の距離から成形品の仕上がりを確認
    ボタン穴の距離計測

BGAのパッドセンター間隔測定

  • Measureのメニューから円弧を選んで 測定したい2つの円を測定します。
  • さらにメニューから平行線の距離を選んで 2つの円の中心点から中心点を測定すると2点間のピッチ距離が測定できます。
主な用途
  • 金属加工において、ネジ穴等の穴ピッチ間の計測による仕上がり確認
  • 電子基板におけるパターンのピッチ確認
  • 電子基板のスルーホールやランド、ビアホールの穴ピッチ確認
  • 2つの歯車の距離計測
  • 成形品の仕上がり確認(穴位置など)

さらに機能を応用した用途

これまでの使用例は、離れた2つの円の中心間距離でしたが、2つの円が重なっている場合は、2つの円の中心位置が、どの位ずれているのかがわかります。
例として同軸ケーブルで説明をします。
同軸ケーブルの中には信号線が通っています。下のイラストはケーブルの断面になります。 同軸のケーブルの外被となる外周で円を作成(イラストの赤い部分) し、次に芯となる信号線の外周で円を作成(イラストの緑の部分 )します。
信号線がケーブルの中心を通っていれば、左のイラストのように中心位置がほぼ同じになります。 中央のイラストのように信号線がずれている場合は、中心位置がズレてきます。 右のイラストのように2つの円の中心間距離からおおよその数値でズレ量を計測することができます。

同軸ケーブルや端子など、外被と芯の中心位置がどの程度一致しているかを確認するときに有効です。
外被と芯、それぞれ3点指定し、2つの正円を作成すると、2つの円の中心間距離が計測され、どのくらいずれているかがわかります。

計測具体例

クリックすると拡大します
  • 外被と端子で円を作成。
    外被と端子の中心ズレを確認
    同軸端子の芯ずれ計測
  • 光ファイバーのクラッドと伝搬部のコアで円を作成。
    中央の緑の線幅がズレ量
    光ファイバーの端面のコア/クラッドの芯ずれ
  • ノズルを外周部と内部で円を作成。
    中心ズレを確認
    ノズルの芯ずれ計測
主な用途
  • 同軸ケーブルや端子の芯ずれ計測
  • 光ファイバーの導光部であるコアと、その周りのクラッドとの芯ずれ計測
  • パイプの外径と穴の位置ずれ確認
  • カテーテルや注射器の外径と内径の位置ずれ確認
  • コレットチャックの芯ずれ確認

2つの円の中心から中心までの距離計測 を保有する弊社計測ソフト
Leopard
MicroLabo(MicroLaboLTの上位ソフト)

 

周囲長計測

多角形や曲面をもった観察体の周囲長や複雑な形状の傷測長を簡単に行う方法です。
観察体の周囲あるいは傷をなぞっていくことで、おおよその長さを計測できます。

複雑な傷の長さ計測に有効です。
傷に沿ってなぞっていきます。
なぞり終えると、なぞった距離=傷の長さ計測

生産工程や梱包において、なかなかゼロにできないトラブルに傷があります。 傷の付着場所や原因を解析するうえでも、傷の長さを知ることは重要ですが、必ずしも傷は直線ではありません。ジグザグの傷や湾曲した傷もあり、これらは2点間の距離計測では対応できません。 この周囲長計測機能を利用すれば、複雑な形状や曲面の傷であってもマウスをペンのように使って傷をなぞっていくだけです。おおよその長さを計測することができます。また、カケなどの長さ確認にも応用できます。

計測具体例

クリックすると拡大します
  • キズに沿ってなぞることにより長さを測長
    傷の長さ計測
  • 刃の欠けた部位に沿ってなぞることにより、長さを測長
    刃のカケの長さ計測
主な用途
  • 製品、部品についた複雑な傷の長さ
  • 加工品の湾曲部の長さ計測

周囲長計測 を保有する弊社計測ソフト
Leopard
MicroLabo(MicroLaboLTの上位ソフト)

 

多角形面積計測

多角形や曲面の大きさを簡易に計測する方法です。
マウスをペンのように使って観察体の周囲をなぞっていくことで、およその周囲長、面積を計測できます。

観察体の周囲に沿ってなぞっていきます。なぞり終えると、なぞった距離=周囲長と面積が計測。

生産工程におけるトラブルのひとつに打痕あるいはシミ・ムラがあります。 製品や部品に付いた打痕は付着場所や原因を解析するうえでも、大きさの計測が非常に重要になってきます。打痕は楕円であったり多角形に近い形状であったりします。 多角形面積計測は、打痕の周囲をなぞっていくことで、およその周囲長、面積を簡単に計測することができます。 その他の応用として、治工具の破損部位の計測です。治工具の破損は、生産に大きなダメージを与えてしまうため、破損部位のおおよその面積や大きさを計測することは原因解析に重要なことです。 また、形状が非常に複雑な観察体の面積計測にも有効です。

計測具体例

クリックすると拡大します
  • 工具の欠けた部位に沿ってなぞることにより、欠けた面積を計測
    工具先端のカケ部分の面積と周囲長計測
  • 複雑な形状のアメーバでもなぞっていけば、面積を簡単計測
    アメーバの面積と周囲長計測
  • フィルムの穴もなぞるだけで面積を確認
    生産工程でフィルムに発生した穴
  • コンタミと呼ばれる異物に対してもなぞるだけで簡単に計測
    潤滑油に混在した異物の面積
  • ばねの断面もなぞるだけで面積を確認
    ばねの断面積
  • 塗装ムラ、不具合には囲うようにすれば、大まかに面積の計測が可能
    塗装ムラの面積
主な用途
  • 金属や樹脂成型品についた打痕の面積計測
  • 治工具の破損部分の計測
  • 製品に付着したシミ、ムラの面積計測
  • 食品混入の異物や虫の大きさ計測
  • アメーバのような複雑形状の面積計測

多角形面積計測 を保有する弊社計測ソフト
Leopard
MicroLabo(MicroLaboLTの上位ソフト)
MicroLaboLT
Achcam(DS-3A,DS-3ALスコープのみ動作するDS-3A/AL専用ソフト)